
- トイレ離座検知システム (トイレ離座センサー<前方ボード用(はね上げタイプ)>)
- 前方ボードを上部へ上げたときの動きをトイレ離座センサーが検知し、患者さんが立ち上がろうとしていることをナースコールでお知らせ。トイレでの転倒リスクの軽減に役立ちます。また、便座に座る際に前方ボードに寄りかかることで、排泄しやすい前傾姿勢をサポートする役割も果たします。
- TOTO株式会社とのコラボレーションで製品化しました
トイレでの転倒リスクを軽減する
トイレ離座検知システム
トイレでの転倒リスクを軽減する
トイレ離座検知システム
矢部 剛生
第1地域統括グループ
兼 設計開発グループ
担当マネージャー
菊池 修
設計開発グループ
兼 第1地域統括グループ
係長
ご協力いただいた看護部の皆様
看護師長 北川 裕子さん
副看護部長 細海 加代子さん
看護師長 久保 祥子さん
砂川市立病院の4西病棟様は、循環器内科と心臓血管外科の混合病棟のため、利尿剤の内服や持続点滴が多く、患者さんがトイレに行く回数が多くなっていました。そのため、排泄にともなう転倒・転落事故がインシデントの1位になっていました。
砂川市立病院様では、トイレでの転倒・転落の防止に対するさまざまな対策を講じていらっしゃいましたが、インシデントがなかなか減らず、とてもお困りでしたよね。
そうなんです。入院患者の高齢化にともない、トイレでの転倒・転落が減少せず課題でしたね。
ベッドサイドでの転倒・転落防止に対しては、種々の予防グッズなどを利用して対策できていたんですが、トイレ内に関しては、スタッフが付き添う、もしくは見守ること以外に方法はありませんでした。
特に人手の少ない夜勤帯やナースコールが多い時間帯などは、患者さんを一人にしてしまうこともあり、そのことも転倒・転落の原因になっていました。
北川師長からケアコムさんへ、トイレでの見守りに役立つ新たなセンサーなどをご提案いただけないかと相談したことが、今回の製品開発のきっかけでした。
ご相談を受けた後、インシデント件数の多い病棟様の現場確認と、師長様へのヒアリングを行いました。すると、トイレ内での課題は、「座位保持をしたい」「ナースコールで呼べない認知症患者さんのために」「片麻痺やせん妄の患者さんの安全確保」など、病棟ごとにさまざま。 そこで、ケアコムにできること・できないこと、そして病院様に直接ご確認いただきたい点などを整理してご提示しました。
課題は多々あるものの、共通のキーワードは、「立ち上がる際に少しでも早く!」です。可能ならば、患者さんがトイレで立ち上がる前にナースコールが鳴る仕組みをつくることが目標でした。
そこで、便座に直接取り付けるセンサーや、患者さんを囲うような柵にセンサーを設置することも検討。しかし、清拭性の問題や患者さんの抑制につながる可能性があることから、そうした課題を解決できるような製品を検討していきました。
看護部様にご提案したのは、トイレ用の手すりとセンサーで患者さんの立ち上がりを検知できるシステムです。板と棒を使った簡易的なモックを作成し、動作イメージなどをお伝えしたところ、製品化への同意をいただきました。しかし、イメージするようなセンサーが市場にあるわけもなく……。製品開発の本当の苦労はここからが本番でした。
「何か流用できる製品はないか」と、あの時は市場調査にとことん時間を費やしましたよね。でも、「これだ!」というものがなかなか見つけられなくて……。
ボードを上部へ上げたときに
ナースコールに通知
そんな私たちの救世主となったのがTOTO株式会社製の前方ボードでした。過去に共同研究を行った経験があったことから、営業企画グループを介して、TOTO様にこの取り組みについて相談しました。TOTO様は、“ものづくり”に対する考え方にとても共感できる企業様。そして、製品の安全性が高く、多くの実績をおもちです。「TOTO様との協業は成功のカギ!」と考えましたね。幸いにも趣旨にご理解いただき、共同開発がスタートしました。
TOTO製の前方ボードとケアコム製のセンサーの整合性をとることや、病院様に設置されているほかの衛生設備が、TOTO様の競合他社製だったことなど多くの困難もありました。
衛生設備のメーカーが異なるということで、院内の同意を得るのにも大変苦労しましたね。
はね上げタイプの前方ボードは、圧迫感があるかと思っていましたが、色味や素材がやわらかく、拘束されているような印象はありませんでした。患者さんからも前方ボードを下ろすことによる拒否的な様子は見られません。
患者さんがどう感じるかが一番の気がかりでしたが、座位保持の安定効果があるため、トイレが済んでも看護師さんを待つようになってくれたそうで、とても安心しました。
安楽な姿勢で排泄できるというメリットもありますよね。体動による倦怠感があっても、「排泄はトイレでしたい」という患者さんの想いに寄り添ったケアの実現にもつながっています。
排泄しやすい前傾姿勢をサポート
それから、意外な効果もありました。当初、高齢者や認知症患者の方を対象と考えていましたが、実際には認知面に問題のない心不全の患者さんが「これがあると楽だ」と、排泄時に利用している様子があり驚きました。普段、心負荷をかけないようにと指導を行っていますが、楽な姿勢を提供しようという発想がそもそも私たちになかったので、新たな活用方法の発見でしたね。
そして、スタッフの業務負担の軽減にもつながっています。特に夜勤帯など多重業務になるとき、患者さんをトイレに残すことに対する葛藤から、多少は解放されたのではないかと思います。
トイレ離座センサー設置前後の一年間で、転倒・転落の回数を分析したところ、設置前の9件から設置後は4件に減少しました。また、どのような容態の患者さんにこのシステムを使用すれば有効なのかという示唆も得られ、病院様ではさらなる安全管理につなげたいとお考えです。
また、4西病棟様での取り組みの成果を受け、2018年より医療安全推進室様と協働させていただき、一般病棟すべての多目的トイレにトイレ離座検知システムを設置していただくことになりました。
砂川市立病院