ケアコム Carecom Smile

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日本赤十字社 さいたま赤十字病院

妊婦・褥婦さんの理解をより一層深めるための
職員様向け「周産期あるある事例集」を作成。
病院内に潜むリスクだけでなく、日常のリスクや
身体的・精神的変化についても解説!

本ページの内容は、2017年より開始した制作時の情報に基づいています。
作成ツール周産期あるある事例集
ケアコムでは、病院様のご要望をお聞きし、協働しながら、現場で役立つツールの制作を行っています。さいたま赤十字病院様との取り組みでは、出産にともなう母体へのリスクや、妊婦・褥婦の身体に起こるさまざまな変化を知ってもらうことを目的に事例集を作成しました。新入職や異動で周産期病棟を初めて担当する看護師はもちろん、病棟以外の職員にも共有し、妊婦・褥婦さんの安全・安心の看護にご活用いただいています。
ダウンロードいただき、皆様の施設でもぜひご活用ください。

始まりは、既存の『転倒・転落あるある事例集』に周産期の事例も追加したいというご要望からでした。しかし、病院様と話し合う中で、「妊婦さんが感じる非妊時との違いや不安、ストレス、産後独特の精神状態を理解することが大切だ」という病院様の想いを再認識。周産期病棟の看護師や助産師が妊婦・褥婦さんのことをより詳しく知り、安全・安心の看護を提供するために、単独で事例集を作ることになりました。

永松 英示
環境整備支援ユニット
リーダー
石川 富雄
環境整備支援ユニット
出産は身体だけでなく心にも大きな変化をもたらすとお聞きし、「マタニティブルーズ」に関するページを充実させました!

転倒・転落あるある事例集
周産期の事例を追加したいとの要望を受け
転倒・転落以外のリスクも掲載。
単独の事例集の作成を逆提案!

永松

さいたま赤十字病院様では、ケアコム作成の『転倒・転落あるある事例集』を活用いただいています。その事例集の中に、周産期における妊婦・褥婦さんの転倒・転落事例を追加したいという要望を受けました。ですが、転倒・転落以外にも気を付けるべきことがあるのではないか、せっかくなら妊婦・褥婦さんが注意すべきあらゆる「あるある」を紹介する事例集を作成してはどうかと思い、単独の事例集を提案いたしました。

病院様にもご理解いただき、さっそく制作がスタート。妊娠初期から産後1ヶ月健診までの期間に、妊婦・褥婦さんが経験する可能性があるさまざまな「あるある事例」を掲載することになりました。そして、新入職員や異動で初めて周産期病棟勤務となる看護師の方が、いわゆる病気ではない妊婦さん・褥婦さんの身体的、精神的な変化に気づき、スムーズな対応ができるようになるためのポイントも合わせて掲載しています。

「マタニティブルーズ」のページの充実に加え
妊娠・出産に関わるあらゆる事例を掲載。
安全・安心の看護に向けて
身体的・精神的変化の理解を深める

永松

特にこだわったのは、「マタニティブルーズ」に関するページを充実させることです。というのも、以前、女性社員から出産前後に湧き上がってきた心のモヤモヤについて聞いたことがあり、それがずっと心に引っかかっていたからです。

「出産前後の心のモヤモヤ」は、時に悲惨な事件や事故を引き起こします。たとえば、脳に大きな障害を残すほど乳児を強く揺さぶる傷害事件や、車内に置き去りにし、子どもを死に至らしめる遺棄致死事件。マタニティブルーズや産後うつによる育児放棄や自殺なども、今や社会問題にまで発展しています。たとえ、事件や事故には至らなくても、私が話を聞いた女性社員のように、自分ではコントロールできない「心のモヤモヤ」に戸惑っている方も多いはずです。そうした変化に看護師や助産師が少しでも早く気づくことが重要なのではないかと考えました。病院様ともこの思いを共有し、臨床心理士に協力を仰ぎながら、マタニティブルーズのページを制作していきました。

その他にも、これまでの事例集にはない企画を盛り込みました。妊婦さん・褥婦さんは、普段の何気ない行動や日常生活の中にもリスクが潜んでいます。出産前後に起こる身体の変化やトラブルの事例だけでなく、「妊娠中になぜ体重管理が重要なのか」「ヒールを履くことやジェルネイルがなぜ良くないのか」「出産直後に妊娠するとどんなリスクがあるのか」など、看護師・助産師が妊婦さん・褥婦さんに伝えるべき「あるある事例」も掲載しています。

石川

イラストを描くにあたっては、妊婦さん・褥婦さんの感情を表現するのに苦労しました。たとえば、赤ちゃんが泣き止まずに困っているお母さんの辛さを表現したいと、涙が派手に飛び散る絵コンテを永松が用意しました。でも、まんがのようなテイストで描くのは違うような気がして。コミカルになり過ぎず、でも辛い気持ちは最大限に伝わるように描くことに気を付けました。

誰もが理解できるように
用語解説ページも用意。
本事例集が丁寧な患者さん対応の大切さを
再認識するきっかけになることを願って

永松

周産期特有の医療用語も数多く存在しています。たとえばNSTは、「Non-Stress Test」の略称です。これは、ストレスのない状態で胎児の様子を確認し、母体が出産を迎える準備ができているかを見極める検査のことですが、『摂食嚥下あるある事例集』では「Nutrition Support Team=栄養サポートチーム」という意味でNSTと記載していました。このような用語がいくつかあるため、新入職員や他の病棟から周産期病棟へ異動してきた職員が混乱しないよう、職員の皆様にヒアリングさせていただきながら、事例集の最後に用語解説も掲載しました。

病院様とたくさんのやり取りをさせていただきながら、2020年2月に『周産期あるある事例集』が発行されました。発行時には新型コロナウイルスの流行が始まっていましたが、まだウイルスの解明が進んでいなかったことから、今回の事例集では取り扱っていません。コロナ禍で産後うつのリスクが高まっているとの報道もあったため、発行に合わせて、職員の皆様には、より一層丁寧な患者対応を心がけてほしいとお願いいたしました。

事例集の制作過程における、病院様とのやり取りの一部をご紹介します。


『周産期あるある事例集』のマタニティブルーズページを作成しているときの
1コマ

  • インターネットなどで調べていると
    「マタニティブルー」「マタニティブルーズ」「マタニティブルース」と
    表記が乱立していますね。どれが正しいのでしょうか?

  • 「マタニティブルーズ」ですね。


『周産期あるある事例集』に掲載する事例を検討しているときの1コマ

  • 以前、授乳の時間をお知らせするためにナースコールを使って
    病棟内放送をしたいが、死産をしたお母さんには聞かせたくないと
    医師から要望を受け、ナースコールを改造したことがありました。
    そのことを事例集に載せたいのですが……。

  • IUFDのことですね。

  • IUFD?なるほど、
    「IntraUterine Fetal Death=子宮内胎児死亡」の略か。
    でもこれでは初めて周産期病棟を担当する職員には
    伝わらないかもしれない……。
    わかりやすいようにイラストと解説を工夫しよう。

本事例集は、周産期病棟を初めて担当される職員様を中心に、病院内で共有していただいています。周産期病棟に限らず、どの病棟においても、患者さんをよく観察し、「気づきを得る」ことの大切さに改めて気づかされたというお言葉もいただきました。今後、多くの医療機関で活用していただき、安全・安心の看護の実践へとつなげていただければ幸いです。

病院概要

日本赤十字社 さいたま赤十字病院

所在地
〒330-8553 埼玉県さいたま市中央区新都心1-5
開設
昭和9年7月
病床数
638床
ホームページ
http://www.saitama-med.jrc.or.jp/

病院様と一緒に取り組んだ安全・安心のためのツール一覧

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